2012年4月28日(土曜日)
センチメンタル・ジャーニー: 長崎レポート(その4)
コルベ神父という名前を知る人はもうあまり多くないかもしれませんね。
初めてコルベ神父のことを知った中学生の時、私は「
他人のために自分の命を捨てられる」
ということにただただ驚きました。その時の感動が今も続いていて、今回、長崎の本河内にある
コルベ記念館を訪ねてみたいと思ったのです。
HPなどで道を確かめてはいたのですが、長崎の坂道は複雑で地図の通りではないため、
なかなか辿り着けませんでした。
長崎の坂道は、坂の一本ずつに名前が付いている函館の坂とは違って、喩えていえば家々が
棚田のように立ち並び、その段々をつないで無数の坂があるという感じです。こんな急階段
がいたるところにあります。
なんとか辿り着いた聖母の騎士社の前庭に、コルベ神父が立って迎えてくれました。
コルベ神父が雑誌の記事などを書くために使われていた机と椅子。これはゼノ修道士が木を集めてきて作ったものだそうです。私も坐らせてもらいました。
コルベ資料館の一隅に曽野綾子さんの『
奇蹟』(1973年、毎日新聞社)という作品が展示されて
いました。コルベ神父の列聖をテーマに書かれたものでした。
帰京後、この作品を図書館で借りて読みました。その冒頭から少し引用してみます。
有名なドイツの強制収容所・アウシュヴィッツで戦争中に一つのできごとがあった。事件そのものは小さなことであった。コルベという一人のカトリックの神父が、死刑囚の身代わりになって自分が餓死刑を受けることで、その死刑囚を救ったのである。コルベ神父は当時、決して世界的に有名な聖職者ではなかった。代わってやった相手もまた、ポーランド人の一軍曹であった。登場人物はいわばささやかな庶民たちであった。しかし、そこで行われたことは重い大きな意味を私たちに投げかけて行った。