2011年2月6日(日曜日)
「海炭市叙景」を観てきました
海炭市(かいたんし)という町と、そこで暮らす市井の人々を描いた作品 「
海炭市叙景」 は、「
町の物語であると同時に、18人の主人公とその周辺の人々を描いた群像劇でもある」(川本三郎)と紹介されています。この「海炭市」 はわがふるさと函館がモデルになっています。
昨年、映画化が実現し、冬から春にかけて、函館の町で撮影されました。セット撮影はまったくなく、実際の生活空間で、大勢の函館市民が参加して、完成された
映画です。(↑ 函館山と大森浜)
昨日(2月5日)から新宿の
K’scinema で上映されているので、観に行ってきました。「映画そのものより、函館を見たくて」 行ったのですが、なかなか見ごたえのある作品でした。
原作者の
佐藤泰志(さとうやすし)は昭和二十四年(1949)函館生まれ(わたしと高校は違うものの、同じ時期に同じ空気を吸って青春時代を過ごした人です)。大学卒業後、会社勤めをしながら小説を書き続け、何度も芥川賞候補になったものの受賞に至りませんでした。残念なことに平成二年(1990)、妻子を残し、41歳の若さで自ら命を絶ちました。
「
町で個別に生きている人々が、作家という神の目によって有機的にひとつにつながってゆく。短編連作で、いわゆるチェーン・ストーリーの面白さがある」 という解説のとおりの興味深い作品でした。観終わって、
函館山の山頂から夜景を眺めたとき、きらきら光る家々の窓をそっとのぞいたような気持ちになりました。
映画をご覧になれない方も、もしご興味がおありでしたら、原作『海炭市叙景』(小学館文庫、650円)をご一読ください。
やはり「本」のほうが深いように思います。