2011年2月10日(木曜日)
映画「クレアモントホテル」の感想
1月16日の
記事でご紹介したイギリス映画 「
クレアモントホテル」 をご記憶でしょうか? 実はあの数日後、岩波ホールで観たのです。
ロンドンの街がたっぷり見られ、イギリス英語の音も楽しく、
静かで味わいのあるとてもよい作品でした。
でも、「人生の終着点に近づいた人たちの物語」 にはやはり深い悲しみがただよい、ちょっと重い気持ちになって、すぐには感想が書けませんでした。
映画の主人公サラ・パルフリーは80代半ばの中流階級の婦人です。最愛の夫アーサーに先立たれ、スコットランドで子どもたちと同居していたのですが、心が通じ合うというわけにはいかず、その束縛された生活から解放されたくて、自分で探し当てた長期滞在型のホテルに、家出した格好で、やって来たのです。
この孤独なミセス・パルフリーは、ある日、小説家志望の青年と出会います。道で転んだ夫人を抱き起こしてキズの手当てをしてくれるやさしい青年でした。彼との交流をとおして、夫人は亡き夫との思い出を紡ぎ、青年は夫人から人生の奥深さを学びます。
二人の運命的な出会い、二人を取り巻く人々の間に起こる出来事の数々、そこには温もりが感じられるのは確かです。しかし、二人には思いのほか早く別れが訪れます。
映画の宣伝文句のように、「静かな感動が心を満たす」 と単純にいうことはできません。やはり老いと死の悲しみを拭うことができませんでした。
誰にでもあった若く輝く日... それが次第に消えてゆく悲しみ...。
でも、悲しみの背中には喜びがある! その明るいほうに向かっていかなくちゃね。
小学校のときに習いましたもの。 「
心に太陽を持て!」 と。
ツェーザル・フライシュレンの祈り
心に太陽を持て
あらしが ふこうと、
ふぶきが こようと、
天には黒くも、
地には争いが絶えなかろうと、
いつも、心に太陽を持て。
唇に歌を持て、
軽く、ほがらかに。
自分のつとめ、
自分のくらしに、
よしや苦労が絶えなかろうと、
いつも、くちびるに歌を持て。
苦しんでいる人、
なやんでいる人には、
こう、はげましてやろう。
「勇気を失うな。
くちびるに歌を持て。
心に太陽を持て」
(山本有三編『心に太陽を持て』より)